マッチ棒な人々。
ＰＳ２初期のＲＰＧ。タイトルからしてかなりインパクトがあったので、以前から一度プレイしてみたかったのですが、ようやくプレイ、クリアの運びとなりました。
主人公はトコトン影の薄い少年。これほど回りに流されまくる主人公も珍しい（笑）。
彼に、不完全な魔王（影）が乗り移るところから物語は始まります。
まず見た目。
独特・・・・・・を通り越して、シュールと言っていいでしょう。頭がやたらでかくて、目はグリグリまなこ。手足は極端に細くて、どこか操り人形のようなグラフィックは慣れるのが大変最近のリアルさを売りにするゲームからすれば、完全に別路線を狙っています。
やや戦闘中やイベント時のキャラの動きが物足りないのですが、それを補っているのがキャラの言動。
私たちの世界からそのまま詰め込んでしまったようなセリフ（脚本）で、非常にイキイキとした感じを受けます。ブラックジョークや珍妙なやり取りで、思わず微笑んでしまう事多々。このへんはかなりイイ感じですね。
一方で、不評を買ったのがダンジョン表示。画面移動が滑らか・・・・・・と言うより、あまりに滑らか過ぎて視点がグリングリン変わり、自分がどういう風に動いたのか、途中で混乱する事もありました。
また、障害物の陰に入ると全くキャラが見えなくなることもあります。
これらが重なり、ダンジョン探索には少なからず頭を痛めることになるでしょう。
特にラストダンジョンは凶悪。道は複雑だわ、キャラが色々隠れるわと、半泣きになりそうだった・・・・・・。
切り口はかなり独特ながら、中身は思いっきり直球勝負のＲＰＧ。特徴わけがされたキャラが、物語進行と共に仲間になっていき、ストーリーを盛り上げていく、という筋。
各種ステータスや、戦闘システム、物の売り買い等、少々オーソドックス過ぎるきらいはありますが、そのぶん「ゲーム入門者向け」の作品だと思いました。
今どき、ここまで王道なのも珍しいかな？ヘビーユーザーには物足りないかもしれませんけれど。
その王道的な中で、全体として作り込みの甘さが見られたのも事実。
この手のＲＰＧとしてはキモの一つである物の売り買い要素。これがかなり大雑把で、キャラによっては極端に装備品が少ない者もいて、買い物とそれに伴う育成部分が薄味に仕上がってたりします。
価格差が激しいのも残念なところで、一つ物を買ってもストーリーを進めないと、次のはとてもじゃないけど手が出ない・・・・・・という事も随所で見られます。
メインストーリーは後述の通り悪くない、むしろ感心した部分が多いのですが、寄り道要素はほとんどないですね。
アイテム交換イベント、ちっちゃなネジの収集、相性変化システムと、他のＲＰＧでも見られるようなサブイベント要素は、どれも底が浅い印象が否めなく、もう少し深めればより彩りのあるプレイが楽しめたのではないかと思います。
さてもう一つ、システムとして触れておきたい、多くの人が首を傾げるであろう「世界の狭さ」について。
説明書や、ストーリー導入部分、または序盤に於いて、「これから世界をめぐる冒険が始まる」ような事を何度も煽っておきながら、中盤まで来ても、単一に並べられる町と道筋を行ったりきたりするだけで、とにかく「世界観の広がり」を感じる事ができません。私もプレイ当時は少なからず失望したものです。
―――が、これが終盤に入るにつれ「世界の狭さ」を上手く使ったストーリーのまとめ方をしていて、評価がいい意味で一気に反転しました。
なぜ人々の役割が決まっていたのか、そこに入れない者がはぐれモノになってしまうのか、世界の狭さの根本原因とは何か・・・・・・これらについて、一応の理由が明らかになります。
最後に解放（？）される「あの女性」が、どうしてはぐれモノの町に留まっていたのか、その点もキチンと描けていればグーでしたけどね。
このあたりはシステムの仕様とストーリーを上手く繋ぎ合せた点として評価したいです。
その他、オバケに触れると戦闘に入るというシステム、まぁコレ自体は別に問題ありません。
ただ、自キャラが動かなくても、勝手に発生し勝手に寄ってくるため、ことダンジョンにおいてはゆっくり探索できない、という欠点があります。
視点が変化しやすいので、オートマッピングと照らし合わせながら腰を落ち着けて進みたいのに、オバケがよってたかって近寄るのではそれも叶いません。
せめてポーズ機能でもあれば・・・・・・。
戦闘においてはついでに。魔王スタンの役割があまり目立ちません。フライング魔王等、攻撃してくれる事もありますが、かなり稀。
「魔王に取り憑かれた」設定を生かすためにも、魔王攻撃のバリエーションは増やして欲しかったところ。
多くのゲームに言える事ですが、この作品は特に「いかに独特な世界観、キャラに愛着が持てるか」で、評価が相当変わってくるように思えます。
システムの筋はオーソドックス、やりこみ度はあまり高くないだけに。
断っておきますと、私自身はかなり好きな部類に入ります。ＥＤの締め方もいい感じで、ゲームをクリアした・・・という気持ちにも十分浸れたので。
薦めるとしたら、ポポロクロイスシリーズが好きな人に。あのシリーズが好きなら、この作風も好みにマッチするかもしれません。
・キャラクターの言動が小気味よい。
・世界の狭さを逆手に取り、上手くつなげたストーリー。
・ダンジョンの移動に泣かされる。
・オバケがわんさか発生し過ぎ。
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